高齢を理由に成績優秀なるも医学部不合格

医師の仕事と診療科ガイド
56歳の主婦が一念発起して医師になりたいと医学部を受験。 
入学試験は、かなり優秀な成績だったのに不合格。 
納得のいかない彼女は裁判を起こした。

年齢を理由に不合格にしたのは不当として、東京都目黒区の主婦、佐藤薫さん(56)が群馬大学(鈴木守学長)を相手取り、医学部への入学許可を求めた訴訟の判決が27日、前橋地裁であり、松丸伸一郎裁判長は、原告の請求を棄却した。

佐藤さんが医学の道を志したのは2000年冬。
父・森田豊さん(当時81歳)が肺機能低下で亡くなったのがきっかけだった。
入退院を繰り返した晩年、徐々に歩行や記憶する力を失っていく父の姿を見て 「いい一生だったと思える最期を迎えさせてあげたかった」 と、高齢者医療への強い思いがわいたという。
50代で医師になった女性を新聞記事で見て、決意した。

午前4時に起き、1日約4時間、通信教育の課題に取り組んだ。
家族には感謝している。
勉強を始めた時、提訴を決めた時、夫(58)と長男(29)はいつも応援してくれた。
判決を迎えたこの日の朝も 「頑張って」 と送り出してくれた。
 
判決理由で松丸裁判長は「面接の評価は裁判所が審理するに適さない」としたうえで、「年齢により差別されたことが明白であるとは認められない」と述べた。
 
判決などによると、佐藤さんは昨年(2005年)1月に大学入試センター試験、同2月下旬に個別学力試験(2次試験)に不合格となった。
その後、情報開示を求めたところ、センター試験と2次試験の点数が合格者の平均点を約10点上回っていた。
 
佐藤さんは大学側から 「卒業時の年齢を考えたとき、社会に貢献できるのか」 などと、面接で年齢が問題になったとの説明を非公式に受けたと主張。
大学側は「年齢を理由に合否を決めることはない」と否定していた。
 
判決後、佐藤さんは 「誠に残念。 私の年齢が(医師として)不適格かと問われたらそうは思わない。 何歳になっても社会貢献は十分できる」 と語った。

ニュース記事1
ニュース記事2


この人には気の毒だけど、大学側の判断は適切だと思うよ。
そりゃあ、確かにテストの点数は平均点をかなり上回っているし、勉強の面だけを見れば大学に入っても問題なくやって行けると思う。

だけど、医師を志すにはかなり遅いんですよね。
せめて30歳~40歳代なかば位までだったら、入学できたと思うんだけど。


医学部学生時代 (玉子の中で成長している段階)
↓ (6年間)
医師国家試験に合格 (玉子の殻を破っている段階)
↓ 
研修医時代 (お尻に玉子の殻をくっつけて歩いている段階)
↓ (2年間)
その後の10年間は自分の腕を磨く時期 (殻が取れて親鳥から様々なことを教わり、ヒナから大人のトリに少しづつ成長している段階)

その後の20年以上はようやく社会貢献の時期 (親鳥になってヒナに様々なことを教えている段階)

現役を引退、もしくは現役のまま死去
(この各段階の期間は現役の親鳥の医師に聞きました)

つまり社会貢献をするには、医学部入学から最低でも18年を経過しなければ貢献できないということになります。

この56歳の女性には、そこまでの時間が残されているんでしょうか。
仮に昨年すんなり入学できたとして、
医学部学生時代 (6年間)
↓ (2005年時点で55歳なので卒業時では61歳)
医師国家試験に合格 
↓ 
研修医時代 (2年間)
↓ (63歳)
その後の10年間は自分の腕を磨く時期
↓ (73歳)
その後の20年以上はようやく社会貢献の時期

20年目には93歳

机の上で覚えることであれば、確かになんとかなるでしょう。
覚えることは、かなーり膨大ですが。 
でも医師となるには、暗記ばかりではないんです。

現在ニュースになっている「大学受験に関係ない科目の単位が履修漏れになった」問題とは違って、要らない科目は全くないんです。
例え内科医希望だとしても、眼科や皮膚科など他科のことも知っていなければ、「これは○○科を受診させたほうがいいな」という適切な判断が出来ませんから。

他にも、様々な診断方法や手技などもあります。
これらは経験で身に付けていくしかないんです。
例えば、注射をするにも教科書を読んで暗記しただけではダメで、実際に経験してその感覚を身体に覚えさせて上達していくんです。
新米の医師はヘタクソですよ。 (;^_^A

医学部を卒業して、研修医時代からその後の10年間に学んだことが後々役立つことがたくさんあるんです。
そして、この時期はいわゆる「小間使い」なんですよ。
また、先輩医師に教わりつつ、後輩医師に教えていくこともあります。

どんなにしんどくても疲れていても弱音を言っちゃあいけないし、ましてや診断や指示を間違えたり、手技を誤ったりなんてことは絶対許されないんです。
当然ですよね。 患者さんの生命に直接関わってくるんですから。
疲れていたからといって、「A薬10ミリリットル投与」とするところを「A薬100ミリリットル投与」なんてしたら、ヘタをしたら患者さんは死にますよ。

しかも、たまに、ガンセンターにガンで入院してガンで死亡しても、遺族は担当医師やガンセンターを医療ミスで訴訟を起こすことがあるんです。
医師が気の毒になります。
もちろん、こういった場合は、医師やその治療方法に問題なしとして医師が勝ちますけどね。

ドラマ「ER・緊急救命室」を見れば、医師の実務は大変だと分かるのではないでしょうか。
もちろんあれはアメリカのドラマで、また病院勤務の内科医や外科医とは違いますが、「小間使い」の身であれば似たようなものだと思いますよ。

病院勤務であれば当直もあって、当直明けはそのまま外来の診察があるし、午後は入院患者の診察やら検査や手術やら、もろもろ待ち受けています。
若くないと体力が持ちませんよ。
若くても、医学部を卒業してからの12年の間に、体調を崩すことは最低1度はみんな経験しています。
中には入院する医師もいますしね。

それにパソコンも使いこなせないとダメですね。
えっ? 医者なんだからパソコンは関係ないだろうって?
( ̄ε ̄)b" チッチッ
現在は、小さな個人の診療所や医院でない限り、電子カルテシステムやレセプトコンピュータを導入しているところがほとんどです。 (個人の診療所や医院でも導入しているところもあります)

但し、パソコン入力に気を取られて、患者さんをロクに見もしないっていうのは言語道断ですね。
診察室のドアを開けて患者さんが入ってくるところから、すでに診察なんですから。
どんな風に入ってくるか、どんな風に歩いているか、どんな風にイスに座るか、顔色や声の調子なども観察するんです。

それに、5年後の2011年からは診療報酬明細書(レセプト)が、完全にオンラインのみでしか受付けなくなるんです。
現在はMOディスクやフロッピーディスクでの提出、レセプトコンピュータや電子カルテを導入していても紙に打ち出しての提出や、手書きでの提出などいろいろあります。
このレセプトが、最終的に各保険組合に認められて初めて収入になるんです。

医師は医学部卒業後15~16年以上経ってから開業する人もいるんですが、その時は自分の収入の元になる「保険点数」(レセプトに記載するのに必要)を頭に入れておかなけりゃならない。 これは最低2年に1回、多い時は半年から1年で変わることもあります。
もちろん、勤務医時代にも判っていないといけないことなんですけどね。
(開業するにはかなりの資金が必要ですが。)

それでもどうしても医師を目指して医学部に入りたければ、国立(群馬大学は国立)ではなく、私立の大学医学部にすればいいんじゃないかな。
でも、授業料その他のもろもろの金額が、国立の比じゃあないほど高いけどね。
大学によりけりだけど、数千万円の寄付金が要るところもあるしね。(;^_^A
(もちろん寄付金のことは受験案内や学校案内には記載されていません)

さて、この人が仮に2005年に入学できていたとして、61歳で医学部を卒業して、その後何年間 「医師」 の看板をしょっていられるんでしょうか。
なお、現在は医学生でないため、医学部卒業時の年齢はさらに上がります。
そして病院によりけりですが、定年制を取り入れているところもかなりあると思いますよ。

厳しい意見を書きましたが、この人が医師となっても、親鳥になれるまで現役でいるのは無理だと思います。


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この記事へのコメント

みさ♪
2006年10月31日 12:06
せっかく合格点とっているのに、かわいそうと思ったけど、医師になるためには、年月がそんなにも必要なのがわかりました。
でも、医者になれないのはわかっても、大学での学びは自由じゃないのかな。彼女がそれでもいいと考えてるなら、入学させてあげればいいのに。他に介護の道もあるのにねー
2006年10月31日 14:11
みさ♪りん 
そそ、研修医の時から「先生」と呼ばれるから勘違いしがちだけど、医師1人を一人前に育てるのは時間が掛かるんですよね。
それに、歳を取るとどんなに頑張っても気力・体力・記憶力が落ちてくるものです。
でも、どんどん新しい技術や診断方法が出てくるから、常に勉強が必要なんです。
かんた
2006年11月06日 23:17
私も工学部を出てから再受験して東京の某国立大に6年間行き今は開業してますけど現実は上に書いているような理想的な医者ばかりではないですよ。ろくに勉強もせず昔の治療を続け、パソコンすら扱えない輩もいます。だいたい医者なんて自分達が特権階級みたいに思ってそれで満足している馬鹿が多いです。看護師のほうがよっぽど知識も経験もあったりしますね。みんな買いかぶっていますね。だからいくつになってもそういった意欲のある人が入ってくるのは周りの学生にとっても歓迎すべきことですよ。あほな世間知らずの教授たちよりよっぽどためになります。
2006年11月07日 02:47
かんたさん 
ここに書いたのは医師の理想的な姿です。
もちろん、ろくでもない医師が多数生息しているのも事実です。
医学部教授なのに注射さえ満足に出来ないっていう人もいますしね。(*_*)
開業医でパソコンを扱えない年配の医師などは、5年後のレセプトオンライン化で引退する人も相当数出てくることでしょう。
病院勤務の医師はどうするのかは不明ですが。

学問には年齢制限はないですが、医師の実務を60歳代から始めるのはかなり無理があるのではないでしょうか。
この記事の方が一人前になるかならないかの歳の時、同年齢の医師は引退か自分の体力に見合って少しづつ縮小していくかしていると思いますよ。
中には100歳近くでも足腰が丈夫で、現役の医師として忙しくしている人もいますけどね。
うさちゃん
2010年12月10日 11:30
お前は本当に卑しいなあ
眠り猫
2010年12月10日 12:29
うさちゃんさん
初めまして
医師で60歳代だと普通はベテランで一目おかれる存在ですが、その年代で新人で、しかも孫くらいの年の若い先輩医師に教わっている光景を見たら、受診した患者さんも不安が大きいのではないでしょうか。
医師は患者の不安を取り除くのが大切な仕事の一つだと思うので、最初からハンデが大きいですね。
2013年12月27日 23:19
55歳の人よりは現役の若い子を入れたくなる気持ちは分かるけど、年齢で落とすならせめて募集要項とかに書いてくれればいいのに
裏では年齢差別してるくせに「うちの大学では年齢を理由に落としてません」なんていうもんだからひどいものだ
眠り猫
2013年12月28日 04:14
あさん、初めまして
そうですね、募集要項に書いてあれば問題なかったかもしれませんね。
きっと、そんなに高齢の人が受験するというのは想定外だったのかも。
医師としては無理かもしれませんが、ほかの方法で社会貢献してくれることを望みます。

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